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62 高知論叢 第109号4.本件の解説(1)  本件の判断枠組み等(1)憲法異議の受理手続本件はドイツの武器法に対する憲法異議に対し,連憲裁の部会が不受理の決定を下したものである。現在,憲法異議は受理手続を....

62 高知論叢 第109号4.本件の解説(1)  本件の判断枠組み等(1)憲法異議の受理手続本件はドイツの武器法に対する憲法異議に対し,連憲裁の部会が不受理の決定を下したものである。現在,憲法異議は受理手続を経て本案審理に至るという手順となっている。受理手続は,膨大な憲法異議の申立による連憲裁の負担を減らすため,1956年から設けられた仕組みである26。ここでは申立の適法性(Zulassigkeit:裁判の当事者能力や当事者適格等)とは別に,申立の有する一般的な意義(客観的意義)と申立人自身の基本権の保障に関する意議(主観的意義)の有無が判断される。そして,客観的ないし主観的意義が認められない申立の場合,憲法異議に理由があっても不受理決定という形で裁判は拒絶される。具体的な受理の要件は連邦憲法裁判所法(Bundesverfassungsgerichtsgesetz:連憲裁法)で以下の通り定められている。すなわち「憲法異議が原則的な憲法上の重要性を有するとき」(93a 条2 項a),「〔連憲裁法〕90条1 項に掲げる権利の実現のために望ましいとき」(93a 条2 項b 前段),「裁判の拒絶によって,異議申立人に重大な不利益が発生するとき」(93a 条2 項b 後段)のいずれかである27。連憲裁は理由の冒頭で本件異議申立につき,基本的な重要性がなく,権利の実現のために望ましいとはいえず,また,成功の見込みもないので受理しない,と述べている。それでは連憲裁はどのような根拠で以上のような判断を行ったのであろうか。(2)本件の判断枠組みまず判断の枠組みについて。本件憲法異議は,既存の法律が基本権保護義務に関する過少保護禁止原則に反するという主張であることから,一種の(不真正)立法不作為28を問うものであるといえる。連憲裁は航空機騒音決定29にお26 畑尻=工藤2013:311-341(小野寺邦広)。27 連憲裁法の翻訳に際しては,初宿=須賀2003と畑尻= 工藤2013を参考にした。28 畑尻=工藤2013:302-305(武市周作)。29 BVerfGE 56, 54(ド憲判2003:78〔松本和彦〕).