109号

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ドイツの銃規制(武器法)に関する基本権保護義務と憲法異議,そして「国家の暴力独占」63いて,基本権保護義務を根拠として立法不作為に対する憲法異議が成立しうることを認めた30。基本権保護義務とは,各人の基本....

ドイツの銃規制(武器法)に関する基本権保護義務と憲法異議,そして「国家の暴力独占」63いて,基本権保護義務を根拠として立法不作為に対する憲法異議が成立しうることを認めた30。基本権保護義務とは,各人の基本権を第三者による侵害から国家が保護する義務であるが,この法理は周知の通り第一次堕胎判決31によって初めて連憲裁で認められ,それ以降は連憲裁で確立された判例理論となっている32。判例・学説によれば,保護義務は第一次的には立法権に課せられ,場合によってはそれが行政権によってさらに具体化されるが,それらの不履行等に関しては最終的には裁判権による審査を受けるとされる33。ドイツにおける保護義務の基本法上の根拠としては人間の尊厳(基本法1 条1 項1 文),基本権の客観法的側面,国家目的等が挙げられてきた34。本件で連憲裁は諸判例を引用しつつ,生命・身体の権利( 2 条2 項1 文)から保護義務を導いており,基本権の客観法的側面を保護義務の根拠にしたものと理解できる。また,具体的に,武器法に関する2003年の連憲裁の憲法異議不受理決定3(5 後述)を引用し,銃器の濫用の危険からの保護義務が国家に課せられることを認めている。他方,保護義務の実現に際し,一般に議会や行政には広範な裁量(判断,評価,形成余地)が認められる。したがって過少保護禁止原則に関する裁判所の審査は限定的にならざるを得ない。本件で問題とされたのは生命・身体という基本権の中でも最重要の権利である。だが,連憲裁は先例を引用して,立法者の広範な判断余地を強調し,公権力の保護義務違反を認定できるのは,公権力が全く措置をとらないか,とった措置が保護目的に完全に適合していない,もしくは全く不十分である場合に限られる,とした。以上の判断の枠組みを前提に,連憲裁は具体的な判断を行ったわけであるが,その検討の前に,本件判断の前提となる武器法の概要等を紹介しておきたい。30 Jarass/Pieroth 2012:987(Rn.50a), Sachs 2011:107(Rn.98).31 BVerfGE 39, 1(ド憲判2003:67〔嶋崎健太郎〕).32 Sachs 2011:118-121(Rn. 24-35), Hufen 2011:53-55, Stern 2010, 小山1998:第一章。33 小山1998:51-56。34 小山1998:第五章。35 BVerfGK 1, 95 <98>.