109号

109号 page 66/104

電子ブックを開く

このページは 109号 の電子ブックに掲載されている66ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
64 高知論叢 第109号5.ドイツ武器法の歴史36ドイツではいわゆる営業法(Gewerbeordnung)や各領邦の法を除き,近代に至るまで武器に関する統一的な法規制は存在しなかったといわれている。やがて1800年代後半から....

64 高知論叢 第109号5.ドイツ武器法の歴史36ドイツではいわゆる営業法(Gewerbeordnung)や各領邦の法を除き,近代に至るまで武器に関する統一的な法規制は存在しなかったといわれている。やがて1800年代後半から刑法等によって武器の使用が規制され始めるが,武器の所持や携行それ自体は原則として禁止されていなかった。第一次世界大戦後には戦争で使用された武器が私人の手元に残るなどしたことから,狩猟用も含めた武器の包括的な法規制が試みられたものの,不安定な社会情勢等もあって成功しなかったとされる37。そして1928年,「銃器と実包類に関するライヒ法」(Reichsgesetz uberSchusswaff en und Munition)(RGBl. I 143)が登場する。これは銃器の取引,取得,使用等を初めて包括的に規制した法で,官庁に対する武器の登録義務や許可証の仕組み等も含んでいた。その後本法は強化され,また,打撃・刀剣武器(Hieb-und Stoswaff en)も他の法令で規制されるようになる。そして本法は1938年に全面改正され,ライヒ武器法(Reichswaff engesetz)(RGBl. I 265)となる38。第二次世界大戦後の占領期に占領軍の法令によって効力を停止されていたライヒ武器法は,1955年の主権回復に伴い再び効力を持つようになる。ただし基本法上,武器の所持・使用に関する規制は連邦の立法権限の範囲外だった。他方,基本法74条11項は連邦の競合的立法権限として経済法を認めていたことから,ライヒ武器法の武器の製造・取引等に関する部分だけが連邦法として効力を発揮し,武器の所持・使用等に関しては各ラントがライヒ武器法を参考にするなどして法規制を独自に行うこととなった。こうして武器規制が連邦とラントで分裂することになり,銃器の所持許可制度がラント間で差が生じる等の弊害を生んだと指摘されている39。36 Steindorf 2009:4-14. 土屋1965:115-116にも簡潔な紹介がある。37 Steindorf 2009:5-6.38 Steindorf 2009:6-7.39 Steindorf 2009:7-9.