109号

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ドイツの銃規制(武器法)に関する基本権保護義務と憲法異議,そして「国家の暴力独占」65それから約20年後の1972年,基本法が改正されて74条 4a 項が追加され,連邦の競合的立法権限として武器法および爆発物法が認....

ドイツの銃規制(武器法)に関する基本権保護義務と憲法異議,そして「国家の暴力独占」65それから約20年後の1972年,基本法が改正されて74条 4a 項が追加され,連邦の競合的立法権限として武器法および爆発物法が認められるに至った。様々な法案が作成され,連邦とラント間の協議等に時間を要したものの,同年に武器法(Waff engesetz)(BGBl. I 1797)が制定されて翌1973年から施行されることとなり,武器規制の分裂状態が解消することになった。その後武器法は2002年に全面改正を迎える(BGBl. I 3970)。その直接の契機となったのは,2002年4 月26日にテューリンゲン州エアフルトで,19歳の青年が銃を用いて生徒,教師,警察官等16名を殺害した後に自殺した事件である40。この事件は社会に衝撃を与え,銃規制を強化する法改正が行われた(なお後述のように,本改正後の武器法に対しては射撃者の団体から憲法異議が申立てられている)。さらに2009年には上述のヴィネンデン事件が発生し,17歳の少年によって15名が射殺された。この事件の遺族らが本件憲法異議を申立てたのである。この事件を受け,2009年にも武器法の改正が行われている。6.ドイツ武器法の概要41(1)法の目的・定義等武器法の目的は「公共の安全と秩序の重要性を考慮して,武器と実包類の取扱いを規律すること」である(武器法1 条1 項)。ここでいう「武器」とは銃器(Schusswaff en),もしくはそれと同等のもの(工業用機械等)( 2 条1 項),打撃・刀剣武器(Hieb-und Stoswaff en:ヌンチャクやナイフ等)のように,人間による攻撃ないし防御の能力を阻害もしくは減少させるためにつくられた携帯可能なもの( 1 条2 項1 号a),および,本来はそのような目的でつくられて40 参照, テューリンゲン州司法省の調査委員会による事件の調査報告書(Bericht derGutenberg-Kommission zu den Vorgangen am Erfurter Gutenberg-Gymnasium am26. April 2002)(http://www.thueringen.de/de/homepage/presse/12251/uindex.html:2014年8 月30日閲覧)。41 ここで解説する武器法の内容は,2013年8 月7 日の改正法(BGBl. I 3154)による改正後のものである。なお,2008年時点のものであるが,ドイツの武器法や銃規制等に関する邦文解説として,財団法人社会安全研究財団(2008)がある。