109号

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70 高知論叢 第109号連憲裁は異議申立人に銃規制の強化や特定の措置(スポーツ用銃器の禁止等)を求める権利を認めなかったが,これは「立法者の活動については,周知のように,多くの場合,複数の道具,手段,措置....

70 高知論叢 第109号連憲裁は異議申立人に銃規制の強化や特定の措置(スポーツ用銃器の禁止等)を求める権利を認めなかったが,これは「立法者の活動については,周知のように,多くの場合,複数の道具,手段,措置がある。このため,立法者の活動自体を求めることはできようが,原則として,特定の立法上の措置を求める主観的権利は肯定することはできない」というドイツの判例・学説の傾向に合致するといえるだろう53。なお,2013年5 月,異議申立人らはヨーロッパ人権裁判所(EuropaischerGerichtshof fur Menschenrechte:EGMR)に対し,武器法は殺傷能力のあるスポーツ用銃器を禁止しておらず,また,本件憲法異議における連憲裁の手続に不備があり,ヨーロッパ人権条約5 条(自由と安全への権利),6 条(公正な手続を求める権利)等に反するとして提訴を行った54。8.本件の解説(3)  「国家の暴力独占」論との関係結局のところ本件不受理決定は,連憲裁が従来の保護義務と立法不作為に関する判断枠組みを踏襲し,公権力(立法者)に広範な裁量を認め,憲法異議を退けたもの,ということができる55。連憲裁が本件不受理決定に簡潔ながらも理由を付記したのは,保護義務の応用事例としての意義を一応認めたことや,本件がヴィンネンデン事件の遺族らによって起こされ,社会的な注目が比較的強かったこと等が理由ではないかと予想される。さて筆者は,本件には銃規制と保護義務に関する事例判断としての価値があると考えるが,それに加えて「国家の暴力独占(das staatliche Gewaltmonopol)」(以下,GM)論との関係でも興味深い事例であると思われる。GM とは〈原則として,国内における正当な暴力行使は国家が独占し,私人による暴力行使は2014年9 月15日閲覧)を参照。53 Stern 2010:284(邦訳:268). Jarass/Pieroth 2012:20 (Rn.8), Hufen 2011:54, 小山1998:197-200,武市2001,等も参照。54 Keine Mordwaffen als Sportwaffen!(http://www.sportmordwaffen.de/beschwerdestrassburg.html:2014年9 月16日閲覧).55 本件の解説としては,Muckel 2013やStilz/Ludwig 2013がある。