109号

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ドイツの銃規制(武器法)に関する基本権保護義務と憲法異議,そして「国家の暴力独占」71禁止される〉という記述的な事実認識ないし規範的な命題である56。GMは主としてマックス・ヴェーバー(Max Weber)による国....

ドイツの銃規制(武器法)に関する基本権保護義務と憲法異議,そして「国家の暴力独占」71禁止される〉という記述的な事実認識ないし規範的な命題である56。GMは主としてマックス・ヴェーバー(Max Weber)による国家の定義  「一定の領域内で……正当な物理的暴力行使の独占を要求する(そしてそれに成功する)人間共同体」57  に由来する。ドイツでは1970年代から異議申立行動や「テロリズム」の議論に際し,GMが法学文献に登場するようになった58。近年のドイツでもGM を取り扱った論稿が少なからず公表されているが59,基本権保護義務の根拠60や公権力の民営化(民間化)61を論じる際に用いられることが多い。さて,本件で問題となった銃規制はGM の典型的な事例といえる。というのもドイツ法学におけるGM とは,「近代国家において,個人は原則として自力救済を放棄するのと引き換えに国家による権利保護を受けることになった」62という論理だからである。連憲裁はしかしながら本件でGM に触れることはなかった。異議申立人の書面でもGM は触れられておらず,GM を用いることが事案の判断に特に必要ではなかった,ということが理由ではないかと推測される。ところが同じ武器法に関する別の憲法異議事件ではGM が連憲裁によって言及されているので紹介しておきたい。憲法異議を申立てたのはドイツの射撃者の団体の一つであり,その対象は2002年に改正された武器法の15条1 項から4 項,および7 項という,射撃スポーツ規則(Schiessportordnung)に関する条項である。ドイツでは射撃スポーツクラブ(Schiessportliche Verein)が集まって射撃スポーツ連盟(Schiessportverband)を結成することができる。連盟に属するクラブの会員は,武器所持許可証を取得する際の必要性審査等で有利な取扱いを受けることができる。したがって,会員を増やすため,射撃スポーツクラブには連盟を結成する誘引が働くのである。ところが2002年改正では,連盟を結成する条件として,連盟のための射撃スポーツ規則を連邦や州の官庁等と協議の上で制定し,担当官庁の認可を得な56 GM については岡田2012を参照。57 Weber 1992:158f.(邦訳:9 以下). Weber 1976:29(邦訳:88)も参照。58 Mollers 2006:806.59 Siehe, Gutmann/Pieroth 2010, Kammerer 2008, Klein2010, usw.60 小山1998:192,鈴木1997:198-201。61 Mollers 2000:278-280, 高橋2013。62 岡田2012:243。