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76 高知論叢 第109号1. 経済学会前史(1)文部科学省の社会科学政策と提言日本の高等教育体制ほど官吏の統制が隅々まで行き届いてきた教育組織は他国に例を見出しがたい。文部官吏は制度,人事,予算への規制・統....

76 高知論叢 第109号1. 経済学会前史(1)文部科学省の社会科学政策と提言日本の高等教育体制ほど官吏の統制が隅々まで行き届いてきた教育組織は他国に例を見出しがたい。文部官吏は制度,人事,予算への規制・統制を常に行い誘導してきた。ただし,予算削減と過剰な規制によって大学政策は一貫性と必要な競争を欠き,そのことが地方国立大学が世界的な大学となる道を阻んできた一因であった。旧制高校が新制国立大学に移行する際において,戦後直後の文部省は教養部型を目指した時期があった。その後文理学部が設置された各地方大学には理系学部の設立を容認したが,人文系に関する充分な予算的措置はなされず,社会科学の発展という課題はほとんど顧慮されなかった。近年になって,文部科学省は以下の様なありばい的な文書を提出した。平成14年6 月「人文・社会科学の振興について 21世紀に期待される役割に応えるための当面の振興方策 」において「人文・社会科学は,学問的活動を国際的に展開することによって,諸民族,諸国民社会,諸地域社会の共存・共生の道を拓いていくこと,研究・教育の細分化と閉鎖性の打破,現実的課題への関わりの強化,国際的な交流・発信の積極的な取組」など課題を羅列した。同時に「グローバルなレベルからローカルなレベルにわたる様々なレベルの地域を対象とする研究」の推進を提言した。ここでいう地域とは「アジア,アメリカ,イスラム圏などの諸地域」を含んでいる。「人文学及び社会科学の振興について(報告) 『対話』と『実証』を通じた文明基盤形成への道 」(平成21年1 月20日)では,「統計的な方法,実験的な方法,現地調査等のいわゆる実証的なアプローチに基づいてなされる」ことを強調した。文部科学省は,このような学問の内向き志向打破を指摘したものの,日本の地方大学への具体的な強化方策はなされなかった。