109号

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いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について7者が決して自分の弁明を聞き容れてもらえなければ,取りあえずその場から離脱するために捜査官に迎合するのは,正に密室での自白強要と同じ構図ではなかろうか。仮に....

いわゆる「高知白バイ事件」の再審請求について7者が決して自分の弁明を聞き容れてもらえなければ,取りあえずその場から離脱するために捜査官に迎合するのは,正に密室での自白強要と同じ構図ではなかろうか。仮に,実態がそのようなものであったとすれば,身柄拘束下での自白強要と異なる点は任意取調という形式だけということになる。そもそも,Xの最初の否認の弁解をそのまま書面にすることが稀だとさえ思われる現状の調書の取り方こそが問題なのではなかろうか。しかも,この検面調書を見ると,「警察で指示説明したあとよく考えてみると,白バイと衝突したときに私は停止していたと考えるようになっていたのです。……しかし,今現場での衝突時の写真や図面を見せてもらったところ,私のバスの前輪のスリップ痕が,右が1.0メートル,左が1.2メートル路面についていることが分かりました。……そのことからすると,私は急ブレーキを踏んで停止したことが分かり,衝突したときには私のバスは動いていたことが分かったのです。……それを見て私は,白バイが衝突したときの私のバスの位置は④であり,急ブレーキをかけて停止したのが⑤の地点であることがはっきりしたのです」11とあり,調書の「作文性」の点はさて置くとしても,Xの当初からの認識は,衝突時にバスは停止していたというものであったことが明らかであろう。また,写真等を見たからという理由は,本件のような事案の場合,供述の信用性の根拠としての,供述の変遷に合理的な理由が存するかとの基準に関してこれを肯定する材料とすることは,かなり問題であるようにも思われるのである12。この自白調書を見る限り,スリップ痕に自白を無理に一致させているようにも見えなくないであろうか。実況見分でXに直接スリップ痕を確認させることなく,それと合致するように自白をとるのは,「実況見分が重要なのは,加害責任を問う入り口になるから」であり,「実況見分官の見分結果は,事情聴取でつくられる供述調書の内容と一致します。一致させられてしまうと言ったほ11 2006年11月6 日付Xの検察官に対する供述調書3 丁以下。なお,④は実況見分調書での衝突地点とされた自歩道から約6.5メートルの地点であり, ⑤は同様にバスの停止位置とされた④から2.9メートル中央分離帯寄りの地点である。12 自白の任意性と信用性に関する判例の判断枠組みを検討するものとして,内田博文『自白調書の信用性』(法律文化社,2014年)43頁以下,及び64頁以下を参照。