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4高知論叢第110号さて,このとき,独占企業は1期目および2期目にどのような価格付け,供給量の決定を行うだろうか。ここでは2つのシナリオを考える。ⅰ同時問題:企業が1期目には1期目および2期目の行動を決め,実際に2来目になってからもそれを遵守するⅱ逐次問題:企業が1期目には1期目の行動だけを決め,実際に2期目になってから2期目の行動を決めるなお,独占企業の「行動」とは価格付けと供給量の決定である。この2つのシナリオはそれぞれ異なった結果をもたらす。ⅰで得られる利潤よりⅱで得られる利潤は低くなるのである。これは何故か,直感的には以下のように説明できる。ⅰでは,ネットワーク外部性があるため,企業は1期目に既に,将来2期目の世代2の消費者に安く多く販売することを決めて信頼性のある(credible)アナウンスする。こうすることで世代1の消費者の財からの効用が高まるために,それを予想した世代1の消費者の需要は大きくなる。ⅱでは,企業はいくら1期目に既に,将来2期目の世代2の消費者に安く多く販売することを決めてアナウンスしたとしても,実際には,2期目になってから2期目の販売を決めるので,これは信頼性のある(credible)アナウンスではない。実際に,いざ2期目になったときに,企業は1期目の既に購入済みの世代1の効用を考える必要がないので,2期目の世代2の消費者には高い価格で少量を販売することになる。結果としてそれを予想した世代1の消費者の需要は小さくなる。実際の市場では,ⅰのように,現在と将来の企業行動をアナウンスして遵守することはまず観察されない。ⅱのように毎期毎期価格付けと供給量を決定していると考える方が妥当である。しかし,ⅱでは結果として,場当たり的な企業行動を予想した世代1の消費者の需要は小さくなり,利潤は小さくなる。まとめると,企業がⅱのように逐次的(sequential)に行動する場合,消費者は企業の場当たり的な行動(裏切り)を予想して,結果として企業の利潤が小さく