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110号

94高知論叢第110号天皇にはさまざまな側面がある。天皇の性格は変容しつつも存続して多様な役割を担ってきた。同書は従来個別に論じられてきたこの時期の天皇像,すなわち親祭,親政,統帥を一身のなかで具現する天皇像を諸官との関係で検討した。近代の天皇に関して官民が出版した学術書,一般書は明治以来数多い。大半は伝聞や伝説的な事績を述べたものであるが,本書は天皇と諸官の関係を実証的に明らかにしている。従来は配慮と資料上の制約から,一側面や,一時期だけの業績は少なくなかったが,明治・大正・昭和と続き,かつ性格が変容しつつも官僚によって維持されてきた天皇と諸官の関係を解明した数少ない学術書である。本書は内容と論点も多岐にわたっている。『天皇と官吏の時代1868~1945』(2014年9月26日発行清文堂)は以下の様な章構成である。序章かつての天皇という存在をめぐって第1章天皇神聖神話第2章明治太政官制と親裁第3章『明治天皇紀』にみる国事行為第4章君主と統帥権思想の来歴第5章武官人事大権と天皇第6章帷幄上奏システムと親裁第7章開戦前御前会議と親裁田村教授は明治国家の国体に関して「明治維新が課題とした天皇親政とは,天皇による直接統治を復活するはずのものであった。ところがその親政は“有司専制”によって阻止されてしまったとする事が通説であった。しかし,親政は決して否定されたのではなく,官僚が取り仕切る立憲君主制下の親裁としてオホヤケ止揚された。日本は朝廷を公の権威とし,諸官は太政官,祭祀を担ってきた。ただし,幕末の孝明天皇在位期に至るまでの永きにわたって朝廷の権威は失墜していた。明治政権は,西南雄藩の下級武士と連携した岩倉具視を中心とする開明派公卿によるクーデターによって成立した。彼らは,旧藩主,摂関家を排除して,日本古来の国体に復する事を宣言した。それ故に新政府は何よりも官僚と天皇が一体になった親政でなければならなかった。明治維新は,“御親政”