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110号

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110号

田村安興著『天皇と官吏の時代1868~1945』を読んで95を実現するために文武官が主導した革命であったと言えよう。」と評している。本来,議会は天皇を協賛する機関にすぎなかった。輔弼の副署が記載された文書を裁可する事によって行われる親裁とは,統治には不答責である象徴天皇によってなされた。明治憲法にある,“万世一系これを統治す,統治権総攬,統帥権”などの言葉は,後年において天皇親政,親征の意味と理解されてきた。すなわち天皇といえども憲法に基づいて統治するものの,親政が天皇本来の姿であると理解する者が多かった。近代日本の政体はそのような曖昧さを秘めており,それは憲法そのものに内在する矛盾でもあった。2.本書の対象と内容序章:かつての天皇という存在をめぐって,数多い先行研究があった。本書では以下の様に整理している。第一に,法制史からの研究による見解である。天皇の権力は官僚等に制約されていたが立憲君主制への道を開いたと評価する見解が近年出されている。ただし,この見解では,立憲君主制への道は萌芽に留まり,政党内閣の自滅と戦時大本営の常態化によって立憲君主制は有名無実となったことが重視されていない。第二に,日本の君主制の評価には歴史学から二つの見方がある。この見解はハーバード・ビックス『昭和天皇』と,ドナルド・キーン『明治天皇』から出されたのである。この両者の見解を海外の代表的な国体論と見なし,それぞれについて評価を加えている。第1章天皇神聖神話,では天皇が,祭祀者,統治権総覧者,統帥権者という三つの顔を有したとすれば,それらは別々のものではなく,各側面におけて不可分に連繋し,天皇一身に国体が体現したものであるという本書の前提から,明治憲法設計者に映じた神学の影響がその後の国体に影響を与えた思想史的背景を明らかにしようとしている。第2章明治太政官制と親裁,第3章『明治天皇紀』にみる国事行為は統治権総攬者として,明治維新政府が如何に明治天皇を位置づけてきたのかを明らかにしている。第4章君主と統帥権思想の