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110号

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概要

110号

98高知論叢第110号4.本書の意義本書は,高官の日記や御前会議議事録などの史料を中心に用いながらテーマに接近した学術書である。本書刊行直前において『昭和天皇実録』完成の報道があった。ただし,同書は刊行されておらず,『昭和天皇実録』は本書には反映されていない事は無論である。『明治天皇紀』は昭和天皇時代に刊行され,以来1世紀近くが経過して『昭和天皇実録』が世に出た。「紀」とせず「実録」としたことは歴代の天皇紀では異例である。『大正天皇紀』は出版される予定はないと言われている。明治天皇に関する書物は,『明治天皇紀』を含めて伝説的な文書がその大半である。昭和天皇は,戦前では現人神として扱われた。戦後は極東国際軍事裁判を経て,腫れ物に触るような扱いがなされて学術書は少なかった。大別すれば,1天皇は単なる神輿である。2神輿以上であるが官吏の衆議に従ってからは平和を指向した。3天皇は明確に統帥権,統治権を実際に行使し戦争責任を有している。以上の3点に分かれるが,本書では天皇が多面性と多義的性格を示しており,親裁,親征,親祭のいずれをも行使し,現世における統治権,統帥権を有した事を明らかにした。本書は多くの資料を用い,独自の視点から天皇と諸官の関係を解明した好著である。