ブックタイトル110号

ページ
109/126

このページは 110号 の電子ブックに掲載されている109ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

110号

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

110号

巻末インタビュー103す。ただし,会社や特許は100あって1つ残ればよい方で,大学へのメリットも未知数です。自分の研究は全くそれと正反対の研究教育分野であるにも拘わらず,職務柄,大学発の泡沫ベンチャー会社設立のためのシンポジウムを開いたりして推進する立場になってしまいました。しかし,それを喜んでいたのはごく一部の分野でした。大学改革が難しいという理由は両面があるからです。大学自体が日本の文化的風土や官僚体質と無縁ではなく,そうした点は認識すべきです。自分はどちらかと言えば古く硬直した体質を持っている大学の改革には賛成ですが,ガバナンス強化には反対ではありません。省令改正は国立大学だけを念頭にしたものではなく高校以下の学校のガバナンスも対象としています(学校教育法施行規則等の一部を改正する省令)。ただし学長権限の強化に反対する事が,大学や学部・学問の自治を守るという主張には賛成しかねます。私は1960年の高知県勤評闘争を反面教師として学びました。教授会からだけ組織をみていると,どのような組織が学問の府としてふさわしいかが見えていないと感じるからです。一方で文科省自体が校長,学長権限を強化することで上からの改革を行いやすくする道を開いたと言えます。大学の場合,京大の学長選挙にみられるようにマネジメント能力がある改革派の学長の権限が強くなると,その後は学部自治を標榜する集団からの圧力が強くなる。私学ではありえない傾向が国立大学にはみられます。高知大のような予算7割,人事6割を握っている医学部中心の大学では学長権限の強化如何はあまり関係がなく,京大のような拮抗した勢力の大学ではこの間の文科省令は有効かと思います。文科省が勘違いしていることは,学長権限の強弱と大学改革の関係です。そもそも欧米のまっとうな大学は学長権限が弱く,一方で学部教授会自治という言葉も実態もありません。欧米の大学と比較すると日本の大学はかなり異質な組織です。イギリス国大協会々長だったブライトン大学学長を訪問した時,サーの称号をもったこの学長は名誉職でした。この学長が神戸大学を訪問されたのは10年以上も前ですが,この方は日本の大学が学長権限が非常に大きいことに驚いていました。この大学では学生団体,教員,放送協会や