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110号

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概要

110号

景品戦略の理論:企業の動学的非整合性問題とその解決方法5なるのである。これが動学的非整合性の問題の一例である。ビデオゲーム機例を用いると,いくらビデオゲームメーカーが将来自社のビデオゲーム機が普及することを喧伝しても,将来普及するかどうかは将来になってみないとわからないため,現在時点でのビデオゲーム機の売り上げは伸びないということである。2企業の動学的非整合性問題の一般化モデル景品戦略は前章で取り上げたネットワーク外部性のような動学的非整合性問題を解決することができる。しかし,景品戦略はそればかりではなく,前章では取り上げていないような動学的非整合性問題をも解決することができる。このことを証明するため,本章ではまず,動学的非整合性問題をできるだけ一般的な形でモデルとして表現する3。設定としては次のような2期間の逐次問題(sequentialproblem)を考える。経済には1期目(t = 1)と2期目(t = 2)があり,それぞれの期ではプライスメーカーである独占企業が財を販売し,消費者がそれらを消費する。消費者と独占企業は行動を逐次行う。つまり彼らは「将来」の需要・供給を,「現在」に決めたり約束したりすることはできない。t = 1では企業は1期の財価格P 1のみを決め,消費者iは現在の財価格P 1と将来の予想財価格P 2の下で1期現在の需要量x i 1のみを決める4。次に,t = 2では企業は2期の財価格P 2を決め,消費者iは2期現在の財価格P 2と過去の全ての変数P 1とx i 1の下で2期現在の需要量x i 2を決める。この逐次問題は,企業と消費者が将来について約束(commit)できない状況を描写していると言える。彼らは言わばKydland andPrescott(1977)の意味で,毎期毎期,裁量的に行動している。さて,企業の利潤は以下のように表現される。π=π1 +π2=P 1 X 1-C(X 1 1)+ P 2 X 2-C(X 2 2),(4)3つまり前章の例は本章での一般化モデルの「特殊ケース」である。4均衡では消費者は合理的に将来のP 2を予想する。