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景品戦略の理論:企業の動学的非整合性問題とその解決方法7さて,同時決定のファーストベスト戦略(6)と逐次決定戦略(8)は異なる解を持つ。これが一般的な形で記述した動学的非整合性問題である。定義2(企業の動学的非整合性).企業のファーストベスト戦略(X 1 *, X 2 *)が逐次決定戦略と同じ解であるとき,(X 1 *, X 2 *)を動学的整合であると呼ぶ。一方,企業のファーストベスト戦略(X 1 *, X 2 *)が逐次決定戦略と異なる解であるとき,(X 1 *, X 2 *)を動学的非整合であると呼ぶ言葉で説明すれば,動学的非整合性とは,ファーストベスト戦略をどうしても企業が裏切ってしまう状況である。企業が1期目に,これからファーストベスト戦略(X 1 *, X 2 *)と現在および将来実行することを発表したとする。しかしながら,いざ2期目になってみれば,既に消費者は財を購入した後であり,企業は以前に発表したファーストベスト戦略を裏切りたくなってしまう。これが,同時決定のファーストベスト戦略(6)と逐次決定戦略(8)が異なる解を持つということの意味である5。前セクションの例を用いて説明すると,前セクションのⅰのシナリオはファーストベスト戦略(6)であり,前セクションのⅱのシナリオは逐次決定戦略(8)である。さて,ファーストベスト戦略が動学的非整合である場合,企業はファーストベストをアナウンスしていても裏切ってしまうのだが,それでは供給拡大・縮小どちらの方向に裏切ってしまうのだろうか。逆に言うと,理想的にはどちらの方向の約束(コミットメント)が必要なのだろうか。Tamura(2015)によると,供給拡大的(=価格低下的)なコミットメントが必要な場合には∂P 1∂X(X 1 *, X 2 *)>0を満たすことが分かる。25ファーストベスト戦略が動学的非整合な場合,実際の均衡はファーストベスト戦略より低利潤をもたらす。この実際の均衡は後ろ向き帰納法(backward induction)によって求められるが故に,動学的整合であり,合理的期待均衡である。