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110号

景品戦略の理論:企業の動学的非整合性問題とその解決方法13うか,効果的ではないだろうか。ⅰ賞金総額が決まっている景品戦略例1万円を100名にプレゼント例自動車1台を1名にプレゼントⅱ賞金総額が決まっていない景品戦略-100人に1人,1万円をプレゼント-全員に10円をキャッシュバック本稿のこれまでの議論により,ⅰ賞金総額が決まっている景品戦略は効果的な景品戦略であると言える。一方,ⅱ賞金総額が決まっていない景品戦略は効果的ではない景品戦略であると言えるが,これは何故か。理由は以下の通りである。ⅱのような景品戦略でも,2期目にくじを多く配布すれば,当選者を1期目から2期目に移していることになり,「2期目の消費者が保持するくじの価値を合計したもの」も大きくなる。しかしながら,その一方でくじを配布すればするほど景品戦略のコスト(=賞金総額)も大きくなる。つまり,景品戦略のコストは2期目においてもサンクコストではない。それ故に,ⅱのような景品戦略では,企業は多くのくじを2期目になった際に配布するインセンティブを持たないのである。4結論と謝辞本稿で我々は,これまで経済理論では明らかにされていなかった景品戦略の効果と意義について分析した。景品戦略は,将来の供給拡大的なコミットメントとして機能し,しかも実質的コストはゼロとなることを景品戦略定理として証明した。景品戦略はこの機能により企業の直面する様々な動学的非整合性問題を解決する。本稿はTamura(2015)を基にした理論を展開しているが,Tamura(2015)の内容の大部分は著者の学生時代の研究内容であることから,これらの研究は特に,著者の父親である田村安興教授から非常に大きな助けを受けた研究である