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110号

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概要

110号

商品市場に関する試論17場は卸売業者間の市場である。卸売人市場は卸売市場それ自体のソフトと物的設備,輸送手段,取引コストを含む。したがって売買参加者の取引コストによって市場の優位性が決まる。ブローカー市場は生産者と卸,小売が零細である場合は重要な役割を果たす。商品市場が局地的市場からより広域的市場へ,さらにグローバル市場に発展するためには必要条件がある。比較優位の商品市場が成立するための必要条件は,集荷過程において優位性を持つ商品が市場周辺に存在すること。交通,通信,施設を含めた市場の物的要素と市場卸売業者の資本的・人的要素が集積しており,従って当該市場が他の流通チャネルに比して競争力を持っている事。分荷過程においても競争力を持っている事,生産,小売において有力な独占・寡占が存在せず卸優位の流通である事,以上の諸点が卸売市場の存立のための前提である。以上の要素を比較優位性をもった市場が存立するための要件とすれば,それらの要素が多少なりとも減少すれば,市場の存立基盤は後退する。卸は巨大メーカーや大手小売業者によって排除され,やがて市場はその役割を終える。市場そのものは流通の物的な要素にすぎないものであり,生産過程と小売の独占・寡占によって,卸は減少,排除もしくは変質せざるを得ない。マーシャルはかつて『経済学原理』において「一方の極端には世界市場があって競争は地球上のあらゆる部分から直接に作用する。他の極端には片田舎の市場があって遠方からの直接の競争はここには入ってこない。ただし間接に波及する競争はかかる市場にさへママも及ぶ。大多数の市場はかれら両極端のほぼ中間に位する。経済学者・実業家の研究を要するは即ちこの市場である。」2と述べた。市場をとりまく歴史的な影響によって,実際の市場形態は,需給の寡占・独占や様々な混合形態やモデルがありうる。一物一価が成立するためには,その商品が世界規模の自由な競争が行われている事,市場買参人,生産者,仲卸,ブローカー等市場をとりまく関係者による独占・寡占がなく,自由な競争が保2マーシャル『経済学原理分冊3』1925年4月改造社版17頁