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22高知論叢第110号消費地市場が広く展開している事を伺う事が出来る。『中國統計年鑑』によれば浙江省の一人当たり省別GDPと卸の集積度は,上海市,北京市,天津市に次ぐ水準である。農村部を含む省の中では浙江省がトップである。浙江省,江蘇省はこれら直轄市につぐ高い数値を示している。これはこの両省が上海市という巨大なマーケットの周辺に位置しているためである。1990年代初頭,長江を巨龍と見なし,その龍頭にある上海市の再開発が進んだ。もともと国際的商業都市であった上海市周辺には分厚い産業拠点が集積した。上海市の外延部である浙江省,江蘇省において卸特化係数が高い事は,義烏市場の様な産地市場,産地卸が上海市周辺に形成されたためであろう。W/R比率の計算式は厳密には,(卸売業販売額-産業用販売額-海外販売額)÷小売業販売額であるが,ここでは多少の誤差があるが,卸売業販売額÷小売業販売額を用いている。日本のW/R比率はかつて4以上であったが現在は3を切るまで減少した。一方でアメリカは2を下回っている。中国は商品分類別,地域別に大きな相違があるが,概ね4に近く,かつ地域差がある。浙江省は大都市圏に次いでW/R比率が高く,産地卸を複数経て流通する事を意味している。3.労働統計よりみた義烏市場フィリップス曲線は,失業率の低下とインフレ率の上昇という短期の右下がりの関係があるとされる。ただし,1インフレ率と失業率が中長期的に低下する時期。2期待インフレ率の低下する時期。3短期的に供給ショックなどの外部要因がある場合,などによって影響される。さまざまな要因によってインフレーションと失業のトレードオフ関係が無くなる場合がありうる。フィリップス曲線は経済成長率,インフレ率,失業率のほかに,就業者数自体の統計の問題,労働力移動の制限などによってもフィリップス曲線は変動する6。6長期のフィリップス曲線は,インフレ率と失業率には逆相関の関係はない,垂直になると主張するマネタリストらの主張,ポール・クルーグマンらの,低インフレからデフレ領域においては長期においてもフィリップス曲線が右下がりとなるとする主張があるが,中国の統計ではこれらの主張はいずれも正鵠を得ていない。