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110号

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概要

110号

商品市場に関する試論33会社,市場開設主体である政府の側にある。低賃金の出稼ぎ労働者は常に過剰であるためである。経紀人が設定する任意の価格の時に生産者は任意の量を供給する。かつ任意の賃金で雇用される生産者は補充される。義烏市場において最も競争力がある商品は依然としてこのような性格を持つ手工業製品である。数百年の歴史を持つシカゴ穀物市場,チャオプラヤ川流域に広がるバンコクの米穀市場,藩政時代から成立した京阪神の青物市場,日本各地の水産物産地市場などは,いずれも市場が立地する地域において,比較優位性をもった産地としての強みがあったからこそ成立した。義烏市場も然りであったが,義烏市周辺に分布する手工業生産地が後退するなら,義烏市場は存立意義を失い,平凡な一地方市場となるであろう。結義烏市場の競争力は以下の事がその背景にある。1.政府・党主導であること。しかも地方政府の政策と財政支援によって市場の在り方が左右されてきた事。2.自由競争と大量流通,大量生産を前提とする市場にあっては,数百万人といわれる膨大な数のブローカーと卸がリスクを補っている事。3.それら前近代的な流通組織を政府が財政的,制度的に支援しており,地方政府主導で生産余剰を分配している事。4.本来,利益を追求しないはずの地方政府が生産余剰の拡大をめざし,卸売会社の設立,株式上場に関与して利益優先の政策をとってきたこと。5.卸売関係の業者と政府が生産余剰の大半を得,農家副業による手工業者の手取りは最低水準に保たれている事。6.直接的商品生産の低賃金構造は地方政府による人口流動化策によって支えられており,それらのことが市場の競争力の源泉になっている。中国において,このような事は雑貨市場にだけ特有なものではなく,農産品をはじめ各種商品市場でも生じていた。中国の場合,政府・党主導型で進められ,経紀人といわれるブローカーが市場の不確実性を埋めるものとして機能した。しかも労働市場において低賃金労働者の不断の供給によって市場の競争力が保たれている事も特筆すべきである。