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110号

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概要

110号

ドイツの過疎化地域における生活支援の方向性41ユーロ導入にともなう財政規律という財政支出に対する外的な制約が強まる中で,全国統一的な生活条件の創出に関する基準が,連邦政府によって緩められることになった15。生活条件の同等性に関するパラダイム転換は,国家による生存配慮の保障の理念についても変化をもたらすことになる。その変化は,国家が市民の生活を「配慮する」という形から,国家が市民の必要な各種サービスを「保障する」形への転換である16。国家はいまや社会的・地域間不均衡の削減,公共サービスの構築に配慮するのではなく,サービス提供から徐々に身を引き,以前は国家のサービス給付であったものを民間の提供者を通じて調達されることを保障する,ということになる。国家の役割が「配慮」から「保障」へと変化することをとらえて,「社会国家(Sozialstaat)」に代わる「保障国家(Gewahrleistungsstaat)」という概念が近年のドイツ国法学において注目されているということである17。国家の役割に関する理念がサービス供給の「保障」へと変化することで,将来的な生存配慮の保障に関して,次のような点が問われることになる18。国家は生存配慮の分野で何を供給すべきか,できるのか。だれが,どのようなサービスとインフラ供給を将来的に提供すべきか。民間によるサービス調達の限界はどこにあるのか,といったことである。一方で,地域における公共的な生存配慮の主要な担い手は地方自治体になるが,過疎地域においては,行政の役割が限定されていくなかで,民間事業者によるサービス供給も限定されている。そこで,地域住民の参加により,住民主体で課題を解決するという方法が模索されていくことになる。地方自治体と住民,民間企業の協働が,生存配慮の保障にとって大きなテーマの1つになる。生存配慮の保障について,国家の役割の変化と,国家・企業・市民の協働が求められるようになってきていることを確認したうえで,次に,過疎地域にお15「生活関係の同等性」の理念の変容に関する事情について,霜田[2008]を参照。16Neu[2009]S. 12.17例えば三宅[2009]が,「保障国家」という概念が注目されていることについての意味を検討している。18Neu[2009]S. 13.