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42高知論叢第110号ける生存配慮の保障に関する課題について検討したい。そして,章を改めて,住民主体で課題解決にあたるという連邦政府による新しいプログラムの試行の現状について検討することで,ドイツにおける過疎地域の支援の考え方について具体的に迫ってみることにしたい。(2)人口減少下での生存配慮の保障に関する課題2013年3月に,人口減少下における生存配慮の保障に関する課題について,連邦政府において主要な取り組みを所管しているBMVBS(連邦交通・建設・都市開発省)に対してヒアリング調査を行った19。同調査に基づいて,ドイツ連邦政府において認識されている過疎地域の人口減少によって生じる課題について整理する。人口減少,高齢化の進む小規模町村では,今後10年間で20%の人口減少が見込まれているという。特に,1990年のドイツ統一後,旧東ドイツ地域から若い人が旧西ドイツ地域に移動している。その他の地域では,中部・北部ドイツに人口減少がみられるが,南ドイツはさほどでもない。人口減少の影響は,学校,保育施設,医療などに現れる。学校への影響としては,最低60人の生徒がいないと学校を閉鎖しないといけないという問題が生じる。学校閉鎖により,小学校の通学距離の延長による親の送迎負担,学校でのクラブ活動への支障,父兄会などへの参加の負担増といったことがある。保育園の施設の閉鎖も同様の問題であり,2~3歳の子供を預けるために長距離を移動することは親の負担になる。医療への影響としては,医師の退職・補充ができないということがある。診療機関が少なくなっていくことで,10分以内に患者に到達するという救急のルールが守れなくなる恐れがある。そして,人口減少地域においては,生活インフラの保持が難しくなる。とりわけ問題なのは,消防である。消防活動にあたる消防士はほとんどが地域のボランティアで行われており,若者の減少は引き受け手がいなくなることを意味するため,消防車を動かすことすらできなくなるかもしれない。インフラにつ192013年3月8日,都市開発部門所属Hanno Osenberg氏へのインタビューによる。