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110号

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概要

110号

48高知論叢第110号展である。ドイツ統一後に旧東ドイツ地域の生産性の低さが明らかになったこと,そしてそもそも産業立地が周辺地域において進むことが期待できなくなったことである。企業の国際的競争が進むなかで,アジア,東欧に工場を作る動きが強まっており,ドイツの周辺地域に立地の多かった繊維産業にしても,今ではブランド品はドイツでつくっておらず,ブルガリア,ルーマニア,トルコ,中国などで作っている。地域がおかれている環境の変化は,特に旧東ドイツ地域で影響が強い。経済的に厳しい状況が職場の減少,過疎化を招いており,旧東ドイツ地域の都市が,大変な目にあっている。典型的なのは北東ドイツにある都市で,6,000~20,000人くらいの住人規模で,人口密度が25~50人/km2という,小さな市である。以前は市として機能していたが,今は中心部が寂れてきている。北東ドイツの都市はグローバル化の影響の下で,「負け組」地域となっており,統一後20年で人口が20%減少している。しかし,周辺地域(中心部から20kmほど郊外)では人口増がみられるところもあり,地理的な条件として,ドイツは地形が平坦で,交通インフラが整備されているため,どこに住むかはあまり問題ではないことによるものと思われる。しかし,さらに郊外に行けば,農村部で若年層の減少がみられ,インフラ整備も遅れているのが実態である。経済のグローバル化などによって問題のある地域が増えているということに対して,連邦・州・市町村を超えてみなが一致した意見を持っているという。それは,何らかの政策で,地域の維持可能性に対してよい影響を与えることはできるかということ,また,ドイツの掲げる社会的市場経済の理念に対する影響,変化に対して,国としてどうするかが問われているということである。しかし,過去10年間,旧東ドイツ地域で様々な取り組みを行ってきたが,上手くいっていない。そこで,もっと地域住民を中心において対策を考えるべきであると政策担当者の意識が変わってきているということである。今回のプログラムについては,実験的な取り組みとして,地域の人のアイデアを取り入れ,州政府は財政援助と法的枠組みの整備など,地域のサポート役に回り,よい取り組みについては他の地域に広げていくというものである。取り組みの背景には,過疎化,高齢化の進行に対して,地域によってどう取り組