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110号

59研究ノート土佐藩領の湊に関する覚書荻慎一郎はじめに近世の海辺には「浦」と称される地域があった。浦は海運業,漁業の拠点であり,また海運にともない領内外および内陸の各地を結ぶ商品流通の結節点にあって,商業が盛んな所でもあった。現代の海辺集落は漁業を中心として漁村として一括して捉えられることが多いが,近世の浦については近世固有の歴史的性格,住民職業の多様性などから捉え直すことが求められる(註1)。土佐藩の「湊」については,土佐東部に17世紀半ばから後半にかけて築造された「堀湊」について論じたなかで一部触れたところであるが(註2),主要な課題でなかったこともあり,不十分な点が多い。本稿は,その補論を意図している。当時の浦における湊の有無,湊の分類,湊のない浦での船舶の停泊や係留の問題について検討する。停泊,係留については,小漁船の場合は,砂浜など陸上に上げることもできるが,地形的にこれが不可能な場合,また鰹船などの規模の大きな漁船,中規模あるいは大規模な商船の場合はどうであったか,具体的な問題を史料から探り,検討しなければならないであろう。第二に,船舶の湊や浦への入津における風や潮流などの影響である。風については,当時の船舶が帆船であるので,航海にも大きな影響を与えたが,入津の場合も同様であろう。各湊において風や潮が入津にどのように規定性をもったのか,その具体相を紹介,検討する。小稿では,土佐藩領を事例に,浦での湊の有無と当時の湊の分類,浦への入高知論叢(社会科学)第110号2015年3月