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110号

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110号

1論説景品戦略の理論:企業の動学的非整合性問題とその解決方法※田村正興はじめに本稿は経済理論によって,企業の行う「景品戦略」の効果と意義について分析している。分析対象とする景品戦略とは,企業が自らの販売する商品に対して,景品または賞金の当たる「くじ引き券」を付与する戦略である。例えば,ある食品メーカーが商品購入者のうち抽選で1000名に食器をプレゼントするキャンペーン,抽選で200人に1000円をプレゼントするキャンペーン,抽選で100人のうち1人に購入代金を無料とするキャンペーン,購入者全員にフィギュアをプレゼントするキャンペーン1などが分析対象となる。これらの例から分かる通り,商品にくじに参加する権利が付与されていればそれを景品戦略と呼び,実際に券を配るか否かは問題ではない。これらの景品戦略は企業にとってどのような意義があるのだろうか。既存の研究では,Kotler and Keller(2012),Narayana and Raju(1985)に見られるように,景品戦略はいわば広告の一種として,つまり商品の情報や知名度を高めるための戦略として扱われている。しかし景品戦略は明らかに通常の広告とは異なる。商品にくじ引き券または景品が付いているということは,広告とは違って,消費者が商品から得られる効用が直接的に増加するからである。つまり,景品戦略は単なる広告とは別の意義があると考えられる。ただし,景品戦高知論叢(社会科学)第110号2015年3月1これは確率1で当たる抽選と捉えられる。※一橋大学イノベーション研究センター特任助手