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110号

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概要

110号

日治時代・台湾南方澳への高知県漁民の移住の背景83業地であつたが余りに集約的採取を実行した結果漁場荒廃し目下は二三位に落ちた而も尚年産額二三百万円を下らず依然として漁業は盛んである。蓋し(改行)高知□県は水産業を以つて立つてゐる県で将来も亦然りあろう然るに漸次頽勢に赴き人口亦過剰を告げんとしてゐる。此現状を救済し他日に雄飛せんとするには県外発展の外に途はない。元来高知県の漁夫は之を一言に言へば其性質勇敢にして打算的でなく宵越の金は持たない式の江戸ッ子気分に満ちてゐる。而して他国移住を好み水産等に対する手腕経験は深い。之等の理由から大正元年か二年かと思ふが朝鮮に移住を企てた事があつた其時は不幸失敗に帰したが之は同地の漁業が総ての点に於て高知県の漁業と(改行)相違□甚だかつた結果である。然るに本島は前述の如く有ゆる方面より見て発展の好適地と目され県当局に於ても食指大に動き今回予の視察となつた次第で内務部長も同道の予定であつたが差支の為実現しなかつたのは遺憾である渡台後短時日ではあるが一通り全島の漁業地を視察し齎した計画を打明け各州当局の諒解を求めたが各州共大体に於て賛意を表され種々の便宜を与えらるゝ模様で今日総督府当局を訪ひ最後の(改行)諒解□を求め十六日便船で帰県し更に県当局と総督府の間に交渉を開き計画の実現に努力したい所存である幸ひに実現すれば出来得る限り多数移住せしむる計画で茲数年間は五百人位は移住せしめたいと思つてゐる。現在基隆には既に三百人位の高知県人が来てゐるが多くは自由移住で出稼ぎの範囲を脱せず去来常なき状態にあるから今回が此点を大に考慮し県当局よりも補助し本島各州の援助をも仰ぎ永住の計を樹てたいと思ふ訳である。本島の水産業は甚だ失礼な申分ではあるが之を(改行)多年□の経験を積める専門家の立場よる(り?)見ると頗る幼稚を極め未だ初歩の域にあると言つてよい尤も総督府当局に於ても他の重要産業の為め水産業に著手せるは日尚ほ浅く已むを得まい。其の産額も高知県に及ばず其外技術上より云ふも幼稚である。然し将来必ずや有望なるべく我県の移住計画を樹てたる所以は此の過渡期に在る本島の水産業を横合より独占