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110号

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概要

110号

景品戦略の理論:企業の動学的非整合性問題とその解決方法3ネットワーク外部性を持つ財の典型的な例として,Eメールやビデオゲームがある。Eメールから個人が感じる便利さは,Eメールを使用するユーザーが増加すればするほど,一度に皆に連絡を取りやすくなるために,増加することになる。また,ビデオゲーム機から個人が得る楽しみは,同じ機種を持つ友人が増加すればするほど,対戦や情報の共有を通じて,増加することになる。本章で取り上げるモデルはKatz and Shapiro(1986)を基にした,ネットワーク外部性のある2世代,2期間の逐次決定モデル(sequential model)である。需要側の設定として,1期目には消費者である世代1が財を消費し,2期目には消費者である世代2が現れて財を消費する。財にはネットワーク外部性があるため,世代1は,世代2が財を多く消費すると予想すればするほど,自身の財の消費から多くの効用を得る。また世代2も,世代1が財を多く消費していればしているほど,自身の財の消費から多くの効用を得る。例えばビデオゲーム機がこの一例である。将来多く売れると予想されるビデオゲーム機からは消費者は多くの効用を得る。また過去に多く売れているビデオゲーム機からは消費者は多くの効用を得る。一方,供給側の設定として,1つの独占企業が財を1期目にも2期目にも財を販売する。消費者iの効用関数U iは以下の通りである。世代1:U i =u i(x i 1,X 1)+ u i(x i 1,X 1 +X 2),(1)世代2:U i =u i(x i 2,X 1 +X 2).(2)ここで,x i tは個人iのt期での消費量,X tはt期での全ての消費者の需要量を合計した総需要量である。ネットワーク外部性は,u i(・)がX 1がX 1 +X 2 .に関して増加関数であることで表現されている。また企業の利潤関数は以下の通りである。π=π1 +π2=P 1 X 1-C(X 1 1)+ P 2 X 2-C(X 2 2),(3)ここでπは総利潤,πtはt期での利潤,X tはt期での全ての消費者の需要量を合計した総需要量,C t(・)はt期の費用関数である。