ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

8高知論叢第111号3年分(300パーセント)であり,国民資産そマのマうちの半分は農地であった。農地は国民資産の50パーセントを占め,農地資産は国民所得の150パーセントであった。20世紀に入り農地の割合は減少し,宅地が増加している。20世紀前半には宅地と農地は逆転し,20世紀後半には農地の割合はとるに足りない割合となり,国民資本の中の宅地の割合は50パーセント近くとなった。イギリスも米国とほぼ同じ推移であるが,両大戦間期における国民資本の減少が顕著である5。」,ピケティが作成した先進国の統計では,18世紀から19世紀までは農地が国富の50パーセント以上を占めていた。土地資産を農地と宅地に区分して検討する際に,以下の地理的条件を考慮する必要がある。農地と宅地に区分した土地の内訳が諸国間で大きく異なっている。日本の農地面積が国土に占める割合は12パーセントから多い時期でも15パーセントにすぎない。これに対して欧米諸国の農地面積は国土の40パーセント強を占めている。また,農地の総面積を比較すると,米国は日本の100倍,イギリス,ドイツは日本の3?4倍,フランスは6?7倍である。農地の絶対量でも構成比においても日本ほど農地が少ない国はない。次節以下に示すようにそのような農地をめぐる地理的な前提条件にも拘らず,日本の国内資産に占める農地の割合は産業革命以降も高かった。第二次農地改革以前の農地は投機対象となり,国富に占める比重が高かった所以がある。日本の100倍を超える広大な農地をもつ米国でさえ,20世紀初期にはすでに住宅地の資産が農地を上回っている。20世紀後半以降農地が占める割合は,米国の国富の数パーセントに過ぎなくなったが,住宅は資本の50パーセント近くに達した。イギリスは20世紀初頭に住宅が農地を上回り,20世紀後半以降,住宅が資本の50パーセントを占めるようになった。農産物輸出が多いフランスでも18世紀以降,農地の割合が比較的多かったが,20世紀初頭以降は住宅が国の資産の大半を占めるようになり,住宅と農地は逆転した。以上の様に20世紀初頭において国富に占める農地の割合が減少することは先進国に共通する歴史的趨勢であった。5Thomas Piketty“LE CAPITAL”『21世紀の資本』2014年12月