ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

98高知論叢第111号が完全に工業地域よって囲まれることで正当化できないほどの住環境悪化が生じる,というものであろう。そうするとその限りで,衡量の結果,裁判所は当該事例ばかりではなく,住居地域と工業地域の関係について,当該事例を超えて何らかの一般的なルールを定立したとみることができるのではないだろうか。これは2で挙げた通り,呉市学校施設使用不許可事件において行政あるいは裁判所は教育研究集会一般と学校施設使用との関係について「できる規定」の例外として一般的な「すべし規定」を定立したのではないか,という点,すなわち,衡量とルール定立とはどのような関係にあるのか,という一般的な問題へと道を開くことになる。これらの点はすべて,裁量行為における過程及び帰結とは何か,という問題に関わるが,これに答えるためには覊束行為を含む行政の法適用一般のあり方をめぐる議論に一旦立ち返り,その上で効果裁量や計画裁量で示された議論を批判的に再検討することが必要である。この議論は以降の章でみていく法学方法論の領域に属する。