ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

99研究ノート北欧型福祉システムとヨーロッパ・アジア型福祉システムの比較検討スウェーデン・ドイツ・韓国の実情田中きよむ霜田博史はじめにA.センによれば,本質としての「福祉」とは,価値ある生き方(well-being)の達成とその条件・仕組み(capability)を意味する(注1)。国民一人ひとりの価値ある生き方の選択肢(well-being freedom)が豊富な社会ほど福祉力が高い社会となる。A.マズローによれば,人間の欲求は,低次元のものから高次元のものへ,生理的欲求(physiological needs)→安全の欲求(safety needs)→社会的欲求/所属と愛の欲求(social needs / love and belonging)→承認(尊重)の欲求(esteem)→自己実現の欲求(self-actualization)と階層化しているが(注2),かけがえのない存在として尊重され,自己実現欲求を達成することが,「欲求」という表現を別とすれば,センの福祉概念と共通性をもつ。そのような価値ある生き方の達成や自己実現を自立概念に即して言えば,経済的自立(就労や年金などを通じた自立),日常生活自立(福祉サービスや日常的金銭管理などを通じた自立),社会生活自立(地域福祉などを通じた孤立化・孤独死予防),精神的自立(自己決定)の4つの自立が,精神的自立を基盤にして総合的に達成されることを意味する。たとえば,障害のある人が親の保護をふまえて,医師,保育士や特別支援学校,就労支援事業所などの専門職との出会い,保育所,学校や就労支援事業所での仲間との出会い,自分の就労高知論叢(社会科学)第111号2015年10月