ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

北欧型福祉システムとヨーロッパ・アジア型福祉システムの比較検討101選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」,「地域社会における生活及び地域社会への包摂を支援し,並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス,居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること」(第19条),「障害者が,その人格,才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」(第24条),「あらゆる形態の雇用に係る全ての事項(募集,採用及び雇用の条件,雇用の継続,昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し,障害に基づく差別を禁止すること」(第27条),「締約国は,社会的な保障についての障害者の権利及び障害に基づく差別なしにこの権利を享受することについての障害者の権利を認める」(第28条),また「締約国は,障害者が他の者との平等を基礎として文化的な生活に参加する権利を認める」(第30条)と規定されている。以上のように,障害者権利条約は,障害者の人権と基本的自由,自己決定に基づく人間発達や自己実現が多様な形で,合理的配慮に基づいて差別なく尊重される方向を示している。それは,障害者だけではなく,高齢者等を含め,福祉システムが目指すべき方向を国際的に示したものと言える。以下では,スウェーデン,ドイツ,韓国に焦点を合わせ,そのような志向軸も含めた比較検討を行う(注3)。Ⅰスウェーデンにおける福祉システムスウェーデンやデンマークなどの高齢者介護や障害者福祉等の福祉理念や福祉システムは,ノーマライゼーション,脱施設化,自己決定の尊重,残存能力の活用などにおいて先進的な役割を果たし,障害者の就労支援,ハビリテーション,在宅ケアなどにおいても包括的なチーム・アプローチを推進してきた(注4)。しかし,近年,介護付きの特別住宅の減少など,公的介護の縮小とインフォーマルな支援の増大,民間委託化の進行,ケアの質に関する格差などが指摘されている(注5)。以下では,2015年3月27日~31日の視察結果を分析する。視察先は,ストックホルムの郊外に位置するソーレントウーナ(Sollentuna)