ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

北欧型福祉システムとヨーロッパ・アジア型福祉システムの比較検討107陽性が出れば,市庁舎内の青少年外来に通ってもらう。ソーシャルワーカーは麻薬専門の深い知識をもっている。青少年と話していて麻薬を止めるのは難しいと判断すれば,外来支援に切り換える。そして,ミーティングに参加し,親と話し合い,良い結果が出るようにする。中学3年生と高校1年生を対象とするアンケート調査では,アルコール消費が減り,麻薬吸引が増えており,高校1年生の陽性反応(男子20%,女子13%)は中学3年生(男7%,女7%)の2倍前後高い(ストックホルム全体の中ではこの市は低い)。そういうチャンス(環境)がある。彼らに対しては,障害児出産,運転への影響,自殺(飛び降り)との関係,うつ病との関係など,体験者(乗り越えた人)を紹介する。青少年とは,カナビスによって起こる害など,現場で話し合う。数年前まで兵役義務があったため,その追跡調査によれば,13~15歳でカナビスを試した人は,うつ病になる確率が高い。統合失調症との間でも明確な結びつきが見られ,難しい精神症状を生み出す。カナビスは,脳ホルモンに影響し,成熟していない若い脳(25歳で成熟する)はそれを取り入れるため,体の反応が鈍くなる。スパイス(Spice)とアセトンとタバコを組み合わせても,カナビスと同様の効果が生まれるため,スパイスで亡くなる青年がかつては多かった。ソーシャルワーカーは,青少年達の健康状態を良い状態で保つことに責任を持つ。麻薬をもっている人を尋ねるのではなく,吸っていたとしても,取り上げることはできない。隠れてタバコ,麻薬,アルコールを消費する青年もいる。誰が吸っているかは一部のスタッフは知っているが,背景を知る者,知らない者がいる方がよい。グループでどう動いているかを見る方が信頼してもらえる。この担当で仕事をしているのは女性だけであるが,危険を感じることはない。対立を生じさせることはないし,ソーシャルワーカーと出会う青少年で話したがっている人はいない。こうすべき,ということは言わない。アルコールやカナビスを吸っている青少年と出会ったときは,必ず親とコンタクトをとらなければならない。警察や社会福祉局を信頼していなかった青少年の集まる家に行き,「一緒に何したらいい?」と尋ねると,「バスケをしよう」と言われて,それ以降,良い関係になったこともある。青少年の心の中にワーカー達を入れてもらうことが大きな変化になる。