ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

日本の資産構造に関する歴史的研究9過去の統計からみた日本の例を示そう。日本では西洋先進国と比較すると資産構成の推移は異なっている。日本は第一次世界大戦後においてGNPと資本金が急増する。明治期には少なかった資本が1910年以降土地資産を上回り1940年まで単年度国民所得を超える水準に達する。資本が急増した時期は1910年代でありきわめて短期間に日本の資本は集積した。これに対して宅地の伸びは資本の伸びに比べて少なく,第二次大戦後まで宅地の割合が農地より少ない。すでに世界有数の工業国,軍事大国となっていた時代においてさえ日本では農地が土地資産総額の大部分を占めていた。欧州諸国では農地資産が単年度国民所得を下回るまで低下する時期は19世紀までさかのぼらなければならない。しかし,日本では1940年代以降においても農地が宅地と逆転することはなかった。宅地が農地を上回るようになるのは戦後高度成長が始まる1950年代であり,欧米諸国と比較すると50年から100年の遅れがある。日本が零細錯圃的で狭隘な農地と慢性的な宅地供給不足という国図4日本の国民所得比資産の内訳(1880年~1927年:国民所得を100)400350300250200150100資本宅地農地5001880年1882年1884年1886年1888年1890年1892年1894年1896年1898年1900年1902年1904年1906年1908年1910年1912年1914年1916年1918年1920年1922年1924年1926年日本統計研究所『日本経済統計集』1958年朝日新聞社『明治・大正期日本経済統計総観』日本統計協会『日本長期統計総覧』