ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

10高知論叢第111号土の条件を考慮しても,農地資産>宅地資産という国民資産の構造は1950年代まで変化していなかった。?国の資産構造をめぐって日本の資本金総額が土地価格総額を上回るようになる時期は1910(明治43)年頃である。1920年代以降,国富の中で資本は急速に比重を高めた。しかし国富の中で,宅地が農地より少ないことはこの時代における欧米先進国とは大きく異なっていた。第二次大戦期以前における日本の農地資産は大きな割合を持っていた。日本の地主制度は昭和初期には西日本では大幅に後退していたが,農地改革によって農地は農外資本による土地投機の対象ではなくなった。昭和戦前期においては農地への投資が他の金融資産よりもはるかに多くを占めており,日本の資産構成は産業革命後においても西洋とは異なる構成であった。戦後高度成長期以降になってやっと,宅地資産が農地より多くの部分を占めるようになる。日本が欧米諸国なみの資産構造となる時期も50年から100年の時間差があったと見ることができる。高度成長期以降における日本の国民所得比資産構成を図5に示した。1950年代に宅地資産が農地を上回るようになり,実物資産より金融資産が増大する。宅地,農地,現物資本,金融資本の構成比を資産構造と定義する。かつてコーリン・クラークは,就業構造から第1次産業,第2次産業,第3次産業と産業構造を区分した。そして第2次産業は不定であるが,第1次産業は低減,第3次産業は逓増するという学説が今日まで有力である。国の資産構造は以下のように推移する。1農地,2宅地,3資本,4金融資産の割合は,経済発展によって変化する。経済発展とともに金額ベースではいずれの資産も上昇するが,GDP,国民所得比で見た資産構成は次のように変化する。1農地資産農業社会が後退するとともに農地資産は低下する傾向をとる。農業社会が支配的な時代,工業化が未成熟な時代では農地資産が国富の主要な割合