ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

124高知論叢第111号Ⅱドイツにおける福祉システムドイツにおいては,日本より5年早く2000年度から介護保険(Pflegeversicherung)制度が実施され,在宅においては利用料負担がないこと,給付については税を組み込まずほぼ保険料で賄われていること,認定が3段階で厳格化され地域間格差も大きいこと,現金給付のオプションがあること,保険料は所得に対する定率保険料であり高齢者の保険料負担については年金保険との折半負担になっていることなどの違いがあるものの,日本のシステムにとって,そのモデルとなり,実際に制度設計の参考とされてきた(注6)。その一方で,地域福祉・地域づくりの脈絡においては,生活支援戦略が連邦・州の補助金を通じて推進されるもとで,各自治体・地域における生活課題に対する住民の主体的な取り組みが積極的に展開されている(注7)。本稿においては,さらに2014年3月28日~4月1日の視察調査をふまえて,ベルリンやフランクフルトの青少年・障害者や高齢者に対する福祉活動・施策を事例として,ドイツにおける福祉システムの現状と特徴を考察する。1)青少年や障害者に対する就労支援等の取り組みベルリンにおいては,NPO「SOS-Kinderdorf(子ども村)」が児童の居場所づくり,学習支援,青年や障害者の就労支援などに積極的に取り組んでいる。第2次大戦後,孤児を孤児施設ではなく,家庭で育つ形にしたいという創設者(Hermann Gemeiner)の想いで寄付が募られ,子ども村は1949年に設立された。6~10名くらいが「家族」として住み,村のお母さんもいる。乳児から18歳くらいまでが子ども村に住んでいる。この「SOS」は世界で1500か所程度に広がり,うち450か所は子ども村になっている。災害孤児になった地域にもできており,東日本にもできている(仙台市太白区,2014年12月)。子どもの世話だけではなく,青少年のサポート,母親へのコンサルティング,健康・病気のセンター,職業教育,さらに学童保育,妊娠中の母親や出産後の母子に対するコンサルティングなどの機能を果たしている。複数世代同居家族