ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

136高知論叢第111号た。ドイツで最初のデイケアにも取り組んだ。それから,高齢者の活動のための支援やセラピーを行うセンター(Hilfezentrum)を設けた。セラピーは,マッサージ,体操療法,エルボ・セラピー,ロゴ・セラピー,言語訓練などが行われ,最近は自宅でも受けられるようになっている。カフェテリアは,利用者,職員,実習生など100名程度が利用可能である。高齢者ケアの職業訓練を行う学校(これから職に就く人やレカレント教育)も併設されており,現在140名の生徒が在籍している。しかし,140名の生徒すべてがここで実習を受けるわけではなく(15名のみ),他の生徒は別の65か所の施設に出かけて実習を受ける。敷地内には,ケア付き住宅もある。このように様々な種類のサービスが提供可能である施設は稀であり,ドイツ以外の北欧諸国やヨーロッパ諸国には市が運営しているものがあるが,ここは宗教法人が運営している。様々なシステムがあることは高齢者や家族にとって複雑な要素になる。一方で何でもできるという面と,他方であちらこちらに振り回され不要なことまでやらされるのではないかとう不安を招く。建物に住むだけではなく,地域との連携も重要であると考え,催し物を行っている。高齢者,障害者,児童が相互に交流できるよう計画を立てて機会を作るようにしている。たとえば,一緒に歌を歌ったり,工作をする機会を設けているし,言語障害をサポートする職員が児童を教えたりもする。高齢者と障害者が一緒にバス旅行に出かけることもある。ドイツにおいては多世代同居という運動もあり,心に残る大家族に似たものをという意識もある。現実の家族は,自分でケアができなくなったり,子どもが大きくなり家を出て行くということがある。利用者も職員も,その人自身の価値を所有しており,誰に対しても敬意を払うことが大切である。教育していくということではなく,認知症高齢者が他人の住居に入ったり,喫煙やアルコールを好む人もいるので,それを受容しながら支援していく姿勢が求められる。この施設には,4つのコンセプトがあり,1誰も何かを強制されないために広範囲の可能性を与えられる(演奏会,演劇,遠足などが定期的に行われる),2同じフロアで朝食をとり,グループ単位で座って話したり(過去の経験や日常の出来事)体操などに取り組む,3一人ひとりを訪ねて(言語,精神,身体