ブックタイトル高知論叢111号

ページ
142/164

このページは 高知論叢111号 の電子ブックに掲載されている142ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

高知論叢111号

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

高知論叢111号

140高知論叢第111号満たしきれないニーズをフランクフルトのルーム・シェアの取り組みのように法人と自治体の共同した取り組みにより埋めていこうとする模索が見られる。利用者負担の高さに応じられる人に利用が偏る問題や職員の有資格化の課題は残るが,制度上の欠陥を自主的に提起する取り組みと言える。介護施設においても,制度上の給付だけではカバーしきれない負担の問題や人手不足,職員配置の課題が見られる。他方で,在宅復帰は難しい状況にありながらも,一人ひとりのニーズに即して様々に準備されたサービス提供や,家庭的な環境づくり,障害者や児童との共生的な交流の工夫がされている。施設間移動も含め,主体的な選択が尊重されている。行政や制度的な対応だけではカバーしきれない青少年,高齢者,障害者のニーズに応じて,一人ひとりの自立生活や価値ある生き方の実現に向けて,NPOや法人,自治体が地域に根ざした取り組みをすることで,それらの可能性が広げられている。Ⅲ韓国における福祉システムアジア諸国のうち,韓国では2008年から介護保険制度(老人長期療養保険制度)が施行されており,20歳以上の医療保険加入者を被保険者とし(保険料は労使折半),65歳以上の要介護認定者(最重度の1等級から3等級まで)と65歳未満の老人性疾患をもつ者を給付対象とし,利用料(入所施設2割,在宅1.5割)以外の給付費は保険料と公費負担で賄われている(注8)。台湾では,10年以上前から日本などを参考にしながら介護保険制度の導入が検討されてきたが,長期照顧服務法(介護施設や介護職員などを規制する介護サービス法)は2015年5月に成立,2017年から施行される予定であり,長期照顧保険法案(財源の分担割合や給付方法などを定める介護保険制度の根幹法案)は2015年6月に国会に提出され,同9月現在審議中という状況にあるが,若年層も被保険者として位置づけ,給付方法については,現物給付,現金給付,ミックス型給付の3通りが予定されている(注9)。一方,中国は税方式であるが,とくに都市部においては,北欧やヨーロッパ諸国,日本などの多様な施設・設備の積極面を採り