ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

北欧型福祉システムとヨーロッパ・アジア型福祉システムの比較検討141入れたり,評価や資格制度をふまえた質の向上に向けた取り組みが精力的に進められてきた(注10)。そのように,各国は,介護サービスの根幹については保険方式などによるシステム化や標準化を進める一方で,それだけでは満たされないニーズに対応して,地域の様々な市民団体・組織による地域福祉活動を積極的に展開してきた。以下では,韓国の都市部(ソウル市)に焦点を当て,現地視察調査(2015年3月5~9日)をふまえて,障害者福祉システムの現状を明らかにしていきたい。1)江南障害者福祉館ソウル市ではなく,江南区役所が運営する施設である。この福祉館のミッションは,音楽や美術を通じて一般人と普通の生活ができるようにすることであり,積極的なアート(able art, active art)である。スタッフは33名おり,センター長を中心に5チーム(1教育チーム,2文化チーム,3就労チーム,4地域福祉チーム,5運営・企画チーム)に分かれている。教育チームでは,青少年を対象として,音楽(弦楽器,打楽器),美術,体育,芸術等の活動に取り組まれる。家族等を招待して発表会(視覚障害者の音楽発表会等)にも取り組まれる。楽器は,スペリオ,打楽器,ドラム,オカリナ,電子オルガンなどが使用される。子ども達を中心に,音楽,美術,ダンスを通じてリハビリが行われ,普通の生活ができるよう支援される。本人の趣味になり自分の生活に活気が出る。そして,周りと協力できたり,グループ活動ができるようになり,満足感が得られる。子ども達だけでは難しい場合,家族参加の授業もある。才能のある子どもは特別指導して,さらに伸ばされる。6ヶ月くらい観察して,能力があると見れば,芸術の専門家や教授の評価を受ける。文化チームでは,成人中心に文化活動に取り組んでいる。才能ある人は,専門的支援を受け,作品展示し,一般人に知らせるビジネスを様々に展開している。写真やインタビュー映像もある。障害種別は,身体的障害も精神的障害も区別なく,一緒に取り組んでいる。全員がクリエイターであり,障害があっても関係なく,それを乗り越えて偉くなろうとしている。視覚障害者による音楽バンド活動を行っている5名は,テレビ番組にも出演している。バンド名は,