ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

日本の資産構造に関する歴史的研究15制面の見直しや,金利の引上げ,土地関連融資の総量規制の導入などの措置によるところが大きいと述べた。同報告をはじめとしてこの時期の地価上昇がファンダメンタルにそっていないとする見解が大半であった。ただし,説明ができない自体をバブルとして片付けることは違和感がある。バブルとされた時期においても経済現象として説明されるべきであった。ファンダメンタルによって説明できるという見解の代表的は岩田(1993)である。筆者も地価の変動はバブルとして片付けるべきではないと考える。岩田らの説では,(地価上昇率)g>(利子率)r+(流動性プレミアム)βでなければバブルは発生せず,g>rであってもバブルではないとする。地価が変化すると,土地需要は代替効果と資産効果を通じて変化するが,土地と金融資産の代替効果には流動性,不確実性の差も加味される。土地投資が増加する推進的動機は,第1に,投資家が負債を負っているかプラスの金融資産を保有しているかに依存する場合,第2に転用費用をどのように評価するかがβに影響を与える。土地資産には取得時から大きな不確実性があり,流動性プレミアムは大きくならざるを得ない。資産としての土地には金融資産と比較すると明らかにリスクがある。取得,売却時のリスク,売買手数料,固定資産税,流動性リスクなどが他の金融資産のリスクより多い。したがって地価には将来にわたる長期の利子プレミアムが見込まれる必要があり,この利潤獲得が困難であれば売買,開発にはブレーキがかかる。1990年代初頭まで土地価格が右肩あがりであった時には本来の流動性プレミアムが過少に見込まれていた。このように農地転用を伴う土地売買は,地権者にとってリスクを伴うために高い期待収益率が求められることになる。リスクが高いほど資産価格は低くなる。資産の価値は期待収益を利子率とリスクプレミアムの和で割り引いたものであると考え,これが理論価格とみなされてきた。一般に,住宅地の理論地価としては家賃を住宅ローン金利で割り引いたものを考える。商業地の理論地価としてオフィス賃料を長期金利で割り引いたものを用いることが一般的である。地価Pは,賃貸料を(金利?収益期待上昇率+土地保有税率)で割った数値を用いる。理論地価は,1その資産がもたらす期待収益,2資産の利子率,