ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

16高知論叢第111号3リスクプレミアムという三つの要素によって決まるという考え方である。かつて,リスクが大きな株式や債券と比較しても短期的な土地の価格変動の波は大きくなく,土地資産は右肩上りに上昇した時期があった。しかし,長期的な土地資産額の変化は上昇期と下落期が明確に生じる。期待上昇率には明確な変動の波があるからである。高度成長期以降,期待上昇率の波はいくつかの画期があった。土地売却によるリスクプレミアムをどの程度見込むかは,国債などの安定的な金融商品の売買と比較する場合がこれまでは多かったが,安定的な金融商品と土地とを比較するとリスクプレミアムが低すぎる。土地取引と比較した金融商品があるとすれば,為替リスクがある外国株式,債券などに加えてリスクプレミアムがプラスされるべきである。土地価格は以下のように示される。土地の限界生産力Fkは地代Fi,利子率r,生産物価格1,地代に対する税率θとすると(1?θ)FiFk=P= rFiP=r +θr農地は市場からの立地,土壌の性質等によって地代が大きく異なる。また農地を保有する動機が耕作目的である場合と資産的保有の目的とでは保有期間や土地の利用方法が著しく異なる。日本の農地所有の問題は,耕作して農業収入を得ることが主たる目的ではなく,固定資産税対策として農地のままで保持するために転用が妨げられることである。従来,私的所有権優先の法体系と農地所有への様々な優遇措置が土地流動化が妨げられてきた。農地の所有権優先が貫かれている限り転用への規制が解消されず,土地流動化が減少するとリスクプレミアムは増大する傾向が続く。期待収益から差し引くリスクプレミアムをどの程度加味するかは,値上がりが見込める都市部との地方では非常に大きな差がある。特に農地から宅地への