ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

日本の資産構造に関する歴史的研究17転用は差益が大きな反面,地価上昇期待から農地を長期所有している場合が多く,隣接する周辺農家への影響も大きい。売買には取引業者への仲介が必要となり,金融資産より割高な売買手数料を含めて売却先を決定する事が金融資産より容易ではないだけではない。農地からの転用にともなう固定資産税増など社会的,歴史的要素が加わる。また転用を行うためには,農地法による規制があり,届け出申請,許認可手続の複雑さ,煩雑さを伴う。売買にともなうリスクに加えてそれらの転用リスクが加えられなければ転用は容易ではなく,期待収益率が上昇しないと転用は促進されない傾向がある。5.日本の土地資産と農地転用農地転用を行う場合,(1)地権者である農民が農地を転用する時は農地法第4条によって,(2)所有権者以外への移転や貸借によって転用する時は第5条により,農林水産大臣及び都道府県知事の許可が必要である6。水田の場合は非農地への転用は厳しく制限されてきた。地主的土地所有への回帰阻止と食糧供給という名の元に自作農的土地所有保全を目的とするものであったが,この旧農林省主導による法体系が地方主導による都市計画を行う事を妨げた。その意味ではこの事が農地転用の促進を妨げ,地価を異常に高騰させる要因の一つとなった。日本の農地面積は1961年の609万haをピークに一貫して減少し,2008年にはピーク時の7割の462万8千haとなっている。耕地のかい廃要因をみると,耕作放棄と宅地等への転換が大部分を占めており,2008年ではそれぞれ全体の41%,39%となっている。また,耕作放棄地面積は1985年以降増加し,2005年には38万6千haとなっている。近年の転用面積は毎年約1万ヘクタールであるが,1990年初頭には2万ヘクタールが転用されている。全耕地面積の中に占める毎年の転用割合は2パーセントから3パーセントであるが,大規模宅地開発に占める農地転用面積は半分6農地法第5条において農林水産大臣の許可が必要な場合は4ha以上の転用であり,本稿でいう大規模土地取引とは4ha以上の転用を指す。