ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

18高知論叢第111号近くを占めている。農地転用面積は1971年以降減少しており,バブルと言われた1980年代末から1990年代初頭でも微増にとどまっている。1974年から91年までの時期において農地転用によって地価高騰圧力を抑える事ができなかった。図8に転用面積と地価総額の相関関係を示した。74年?91年の曲線が垂直ではなく,右上りであれば土地バブルとはならなかったであろう。日本の土地価格の動向にとって,農地転用は以下のような傾向がある。1日本の都市周辺において高度成長期に農地転用が進み,都市部周辺にまとまった農地が少なくなっている。2農村部の農用地区域,市街化調整区域内の農地の転用需要は供給圧力より常に少ない。3農地から宅地への転用規制と税制が複雑な仕組みによって行われてきた。4計画的に土地が収用されず,適切な転用と都市計画の整合性が計られなくなっている。5農地価格が地代と乖離して農地間に著しい価格差を生んできた。6農地転用が都市の地価高騰の要因となってきた。土地供給面積は以下の総計である。(土地供給面積)L=(不動産市場供給面積)A+(新規農地転用面積)B+(森林原野開発面積)C新規土地供給価格と既存の農地価格水準は数倍の価格差がある。BとCの地価と土地造成後の価格差が極めて大きい。しかし,大規模土地取引税は金融商品取引税より高い水準である。また相続税についても金融商品は減免措置や名義代替が容易であるが,登記ずみの現物土地には相続税リスクがある。したがって地主にとって農地転用と農地保有の意思決定は単に価格差や利子率によって決まらず,メリット,デメリットは互いに相殺される。このことが,たとえ大幅に地価が上昇しても転用や売却をせず,地権者が農地のまま保有する理由である。農地が転用されるためには転用,売却益がリスクプレミアムをはるかに上回るものでなければ実現しない。(土地面積)L=A+B+C(期待利子率)i,(宅地保有税率)γ,(農地税率)θ,(リスクプレミアム)β,(転用面積増加率)α,(土地取引税)κ,(金融商品取引税)δ,前提条件:β>i+γ+θ+κ?δ