ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

22高知論叢第111号などからの供給量である。1999年以降,農地転用面積は漸減傾向であるが,大規模土地取引面積はリーマンショック期まで急増し,その後は減少している。結日本の国民資産に占める農地の割合は1950年代に至るまで宅地より多かった。これは諸先進国に比べて非常に遅いペースであった。日本の農地は狭い国土の中で2割にも満たない。農地が国土に占める割合と人口当たり農地面積が西欧先進国の数分の一から数十分の一の水準であるにも拘らず,産業革命以降においても農地が最も重要な資産であった。日本が農地が国富に占める割合が高かった背景には,日本が産業革命以降においても,農地が最大の投資対象であった事,住宅市場の発展が不十分であった事などがあげられる。日本の土地価格は高度経済成長期以降高騰し,90年をピークにして下落している。20年にも及ぶ地価下落一辺倒の傾向を経験した国は稀である。今日,都市部の商業地,住宅地の一部は世界の金融市場に組み込まれ,首都圏などの地価は上昇に転じたが,都市部と地方との地価格差は広がっている。農地からの転用面積と地価形成は重要な因果関係を持つ。1990年以降転用面積と土地価格総額は負の相関関係にある。安定的な土地供給と秩序ある国土計画のためにはスムースな農地転用が必須であった。本稿で明らかにした様に1974年?1991年の地価上昇局面においては農地転用が進まなかった。その矛盾が「バブル」につながった。中央省庁の画一的な施策を廃止して,土地収容と管理の主体を地方に移管されなければ都市計画は是正されないであろう。参考文献(著書等)伊東光晴(1967)「現代都市と土地問題」『世界』1967. 11岩田規久男(1978)『土地と住宅の経済学』日本経済新聞社新沢嘉芽統・華山謙(1970)『地価と土地政策』岩波書店宮本憲一・植田和弘編(1990)『東アジアの土地問題と土地税制台湾・韓国・日本』勁草書房