ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

28高知論叢第111号うなると実質,高知県と山形県の2県だけが,現段階で地方・地域間の創生・活性の競争に乗り切れていないことが分かる。高知県の経済・社会がどの様に運営されるべきかを考える上でも,高知県の全体像,高知県民の特徴を捉えて置くことは重要である。既に課題山積の高知県は,経済規模が縮小する一途であり,絶妙な地域政策をとらない限り明るい兆しは考え難い。小規模な個別具体的な窮状に対して政策をはるような非効率なやり方より,高知県の大きな特徴から見えてくる大きな弱点を補強する策を張る方が最善である。以下で,その高知県下の家計が直面している経済的環境・特徴を明らかにしている。高知県の家計に関して注目する統計は,高知県の代表的な家計が1ヵ月または1ヵ年に得る「収入・所得」,その収入・所得を生む「労働」,収入・所得を得て消費生活を行う家計が直面する「物価」の3つである。高知県の県内総生産は,2010年度で2兆4002億円(実質・固定基準年方式,平成17年度基準)の全都道府県で鳥取県(1兆9794億円)の上の46番目である。2010年度1年間の(実質)国内総生産(GDP)が537兆円であるから,GDP内に占める高知県は1%にも満たない0.44%しかない。県内総生産とは,県内で産み出された付加価値の総額である。三面等価に基づけば,生産額は,付加価値を産み出した労働者の所得になる。それを表す高知県の県民所得は,2010年度で1兆6815億円(実質・固定基準年方式,平成17年基準)である。これは全国で鳥取県(1兆3259億円)と島根県(1兆6799億円)の上の45番目である。この県民所得を県人口で割れば人口1人当たりの県民所得が算出できる。高知県の県民所得を2010年度の人口764456人で割った,高知県の1人当たりの県民所得は,219.9万円である。全国で,沖縄県(204.2万円)の1つ上の46位である。高知県民の所得の特徴は,全国でかなり下位に位置するということである。このような所得環境は,本当なのか。数字に間違いはないのか。他の所得関係の統計からも確認を行う。また,このような所得環境の背後にある労働の実態はどうなっているのか。高知の労働者が置かれている現状を労働関係の統計か