ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

2高知論叢第111号の資産的価値は非農業部門の発展とともに増加することは必然的な現象であり,土地資産は経済成長とともに絶えず増加し,その逆は稀であった。ただし,国の資産に占める住宅地の資産割合は増加する傾向があるが,農地の資産的価値は時代とともに低下せざるを得ないことは先行研究から明らかにされている。国別の資産構造の差異はその国の経済の特徴を反映する。従来,戦前,戦後直後の土地問題の研究は旧講座派を中心として地主制研究に矮小化されることが多かった。国民経済に占める農地,宅地,資本に関する定量的な研究の蓄積は必ずしも十分ではなかった。日本の土地価格は高度経済成長期から高騰し,1990年代初頭にはバブルを生んだ元凶とされてきた1。その後の地価下落傾向は大都市周辺部ではほぼ終結し,地価は上昇に転じつつあるが,地方では引き続き下落している。都市部以外の土地は低金利政策や量的緩和策の維持,不良債権処理が徐々に進んだにも拘わらず,地価は長期に渡って下落を続けている。日本のように20年にも及ぶ地価下落一辺倒の傾向を経験した国は稀である。21世紀初頭のアメリカではIT不況,リーマンショックがあり,不良債権処理が急速に進められたものの,数年で不動産市況は回復した。市場回復に大きく貢献したのは証券化による投資資金の導入であった。不動産は引き続き金融市場の主要な構成要素となっており,金融危機の発火点が不動産となる状況は広がっている。特に日本でもJ-REITの登場によって都市部の商業地,住宅地が世界の金融市場に組み込まれた。東京都心など大都市の不動産市場ではファンドによる不動産の売買が引き続き活発である。各種市場は,国際経済のグローバル化の中において,ボーダーレス化が進む。市場活動は各国において強い因果関係を持って形成され,土地市場においても例外ではなかった。1980年代後半から90年代初頭のバブル経済と土地問題に関する認識については見解が分かれている。従来,土地問題は,国民に対して適正に住宅が提供されるべきであるという立場から税制や資産格差とともに論じられる事があった。また,国民経済の中1経済企画庁(1993)『年次経済報告』