ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

48高知論叢第111号これらの労働実績に関わるデータから,高知県の最近の現状は,全国よりもよく働く(総実労働時間,所定内労働時間,出勤日数)が,あまり残業のような追加的労働(所定外労働時間)を行わないということである。高知県と全国平均の時給が同じという大きな仮定をおけば,出勤日数を増やして労働時間を多くする高知県の労働者と,出勤日数は少ないが,その分残業をすることで残業代を追加する全国平均の労働者,両者の受け取る給与は近いものになる可能性が高まる。しかし現実は第1節で詳述したように,高知の所得が全国平均を下回るという結果である。2013年12月の毎月勤労統計調査からも,高知県の現金給与総額が493,391円で28位(全国平均が543,583円で8位),定期給与が241,473円で27位(全国平均が260,735円で6位),所定内給与が223,672円で26位(全国平均が240,480円で5位),特別給与が251,918円で27位(全国平均が282,848円で7位)と,高知県の労働所得は全国で「中の下」または「下の上」に位置する。高知県の労働者は,全国的な労働時間と給与の関係から見れば,提供した労働時間の割に稼げていない。これは,前述の全国平均の労働者と同じくらいの給与を受け取る可能性の仮定である「同じ時給」を完全に棄却する。具体的には,労働力提供1時間当たりどれくらい稼ぐかという,一種の労働の効率性とみなせる時給は,3243.85円(現金給与総額÷総実労働時間)で29位(全国平均が3728.27円で5位)となり,時給に500円程度の差が生じている12。ちなみに,2001年12月の高知県の時給(現金給与総額÷総実労働時間)は,4244.67円で全国8位,一方で全国平均は4222.48円で10位に位置し,高知県の労働の効率性は,全国でも上位であった。直近の現状は慢性的な構造ではなく,この10年内に高知県の労働環境の変化によってもたらされていると考えられる。国勢調査による高知県の労働表8左は,2010年の国勢調査の都道府県別の15歳以上就業者数・雇用者数等を基に,15歳以上就業者に占める雇用者の割合を計算した各都道府県の雇用者12日給換算で,高知県が24793.51円で29位,全国平均が28761.00円で7位である。