ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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概要

高知論叢111号

高知県の家計の経済的環境・特徴55図8は,常用雇用者数が,景気の谷の時点での値を100に基準化し,その後景気が拡大していくに従って値がどの様に変化していくのかを表している。4つの循環に共通する特徴は,景気拡大局面の高知県と全国のデータの動きが似ていないということである。この特徴の背景にあるのは,非常用雇用の存在であろう。全国的に90年以降は,景気の拡大局面にあっても常用雇用を増やすのではなく,非常用(非正規)雇用が増える傾向にあったことから,非正規雇用の増え具合によって,高知県と全国とで違いがでたと考えられる。各循環期の特徴を記述すると,まず第13循環は,景気が拡大し始めて2000年まではつかず離れず動いていたが,2000年3月以降後に高知が1999年1月の拡大期初の水準を大きく下回ることになった。この循環期に,高知県の常用雇用者数が1999年1月の水準を上回った時点は一度もなく,景気拡大の実感が得られない局面であったと推察できる。次に,第14循環は,2002年1月から3ヶ月ほどは同じような動きをしていたが,それ以降は高知県の常用雇用者数が大きく伸び,それは1年程続き2003年4月からは全国の動きよりも低調で,景気拡大期首の水準を下回っている。第14循環の高知県においては,短命であっても,日本全体では景気拡大を感じられなかったにも関わらず,雇用者の増加の実現という好循環が生まれていたことが分かる。第15循環は,2010年まで高知県が100のレベル付近を推移しているが,2010年以降は,大きく100を下回る動きをしている。全国の常用雇用者数は安定して景気拡大期首を上回り続けている一方で,高知県は常用雇用者数が増え続けるという状況になかった。第15循環の高知県と全国の波形は,第13循環のそれらに似た形をしている。最後に,第16循環は,これまでの拡大局面の動きと大きく異なる。ある一時点(2013年7月)を除き,高知県と全国の常用雇用者の波形は,同調している。特に,第13循環から15循環まで,拡大局面の数ヶ月は同調期間があり,その波形が大きくずれるということが共通していたが,今次の拡大局面は,波形が大きくずれた2013年8月以降,また全国の動きに復帰しようとする力強さを見てとれる。高知県の景気拡大局面での常用雇用者数の推移は,全国の動きと同期しないケースが過去には多くあったが,最近の拡大局面は,これまでとは異なる高知県の景気回復局面が明らかになった。