ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

4高知論叢第111号2.日本の国富の検討?第二次世界大戦前の統計日清,日露戦間期において繊維を中心とした軽工業と兵器産業を軸とした重工業の循環ができ,日本の産業革命が一応の完了を見たということが山田盛太郎の所説であった。日露戦後の日本政府,特に内務省は日本が西欧諸国と並ぶ世界の“一等国”となったと輿論にむけて宣伝した。しかし,その当時の日本が軍事強国ながら経済力は未だ中進国であった。日露戦争期の1903(明治36)年?1904(明治37)年において,当時の日本政府(内閣国勢院・現総務省統計局)が把握した欧米先進諸国の国富は,アメリカ合衆国1071億ドル,イギリス1082億ドル(本国729億ドル)ドイツ778億ドル,フランス468億ドルであった4。当該時期から約10年後における日本は1913(大正2)年320億円,1919(大正8)年861億円であった。当時の為替レートで換算すると,1913年160億ドル,1919年430億ドルであり,大戦前のフランスの水準に達した。第一次世界大戦(1914?1917)を経て欧州が戦場となり国富が減耗したために,日本の国力が相対的に上昇した。ただし日本社会の実態は依然として農村経済が多くを占めており資本の集積が未熟であり,先進諸国と日本の国富のストックには大きな差異があった。内閣国勢院『戦前戦後における国富統計』(1922年)は,第一次世界大戦前後1913(大正2)年と1919(大正8)年における国富統計を示した。この時期ほど日本の国富と経済規模が拡大した時期はなく,第一次世界大戦を挟んだこの期間のわずか6年間で国富は約2.7倍に拡大した。以上のように日本の国民所得は第一次世界大戦期において急増する。この時期における国富の構成には次のような特徴がある。第一にそれまで国民資産の多くを農地資産が占めていたが,資本市場の伸長という欧米諸国と同様の変化が生じたこと。ただし,それまでの農地が占めていた水準にまで資本は伸びて4内閣国勢院『戦前戦後における国富統計』1922年