ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

68高知論叢第111号高知県に関する長期間の地価のデータを使用する場合,是非確認したい現象がある。それは,バブルの存在である。1980年の後半から1990年の初めにかけて,日本経済は東京を中心に都市部では資産バブルにあった。資産である土地も,その値段(地価)が急上昇して,担保としての価値を高められ,その上に立つ建物の販売価格や賃料が吊り上がった。そこで,東京から遠く離れた高知県で,地価バブルが生じていたのか検討する。図12は,1980年から2012年までの都道府県地価調査による,高知県と東京都の住宅地と商業地,工業地の標準価格(平均価格)の推移を示している。高知県の住宅地と商業地,工業地の標準価格に共通して,東京都とその値を比べた場合,高知県の値は非常に小さいので,図上の高知県の目盛りを右側に変えている。その点に注意されたし。住宅地に関して,東京都は住宅地価のバブルが1980年代の後半から1990年代の前半に現れている。1m2当たり30万円前後だった住宅地価が,ピークでは3倍近く高騰し90万円になっている。この日本の典型的なバブルに基づけば,高知県の1980年代中盤の住宅地価の上昇はバブルであろうか。明確な事は,高知県の住宅地価の上昇が東京に端を発する土地バブルのスピルオーバーしたものではないということである。しかし,この時期に住宅地に対して過剰な需要の盛り上がり,または過剰な供給の細りを起点として地価の決定メカニズムに異常が生じていた可能性が指摘できる。商業地に関しては,東京都は,住宅地と同時期にバブルの証左が現れている。東京都の商業地に関しては,住宅地のケースよりも急激な地価上昇(約3.5倍)を記録している。一方,高知県は,独自の地価推移をたどっている。東京都のバブル初期に一旦地価の下落が生じて,その後東京都のバブルのピークと同時期にピークを迎えている。高知県の商業地の価格はバブルと呼ぶには無理が生じる。定義的にバブルとその崩壊とは,急激な価格の上昇とその後の急激な価格の下落を指す。高知県の商業地の価格のバブルと崩壊というには,急激な上昇と急激な下落という点で説得力を欠く。高知県の商業地価の1987,1988年の下落の要因は非常に興味深い対象であろう。工業地に関しては,やはり東京都はバブルの様相が現れている。東京都では,