ブックタイトル高知論叢111号

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高知論叢111号

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高知論叢111号

効果裁量,計画裁量,及び裁量瑕疵に関する基礎的考察(1)75点を主軸にして,裁量審査のあり方について基本的な検討を行うものであるが,その際,ドイツの裁量瑕疵論及び衡量瑕疵論に関する判例学説の基本的立場及びこれに対して法学方法論的な検討を行う立場を参考にしながら進める。その理由は以下の通りである。既に我が国での多くの研究が示す通り9,我が国の裁量審査を検討するにあたり,ドイツの計画裁量統制の手法が参考になる。ドイツでは計画裁量は衡量の裁量と観念され,これに対する司法統制は衡量をその過程と帰結に分けて,各々に,衡量原則に基づく瑕疵の審査を行うものである。このうち,衡量過程に対する審査は我が国における判断過程の審査と類似するものであるが,これが純粋な過程の審査かという点については異論がある上,帰結に関する審査との異同についても明確なっているとはいい難い。さらに,この過程と帰結の区分は,効果裁量の統制では使われてはおらず,必ずしも裁量審査一般に通用する議論でもない。一方で,こうした判例学説における議論の明確性や一貫性については,法学方法論この学問領域については後述5以降で示すの立場から批判的な検討がなされており,これはドイツにおける衡量審査あるいは裁量審査一般論にとってはもちろんのこと,我が国の裁量審査論を検討する上でも,示唆に富むものであるといえる10。このような立場から,本稿では以下,まず2で,判断の過程と帰結の問題が我が国の裁量統制に関する議論においてどのように関わるのかを示す。その際,その素材として,判断過程の統制手法を比較的明瞭に示していると評価されている呉市学校施設9網羅できないが,本稿が参考にしたものとして,山田・前掲注(7),高橋・前掲注(7),海老沢俊郎「計画裁量の概念についてドイツの計画裁量論を中心として」名城法学57巻3号(2008)1頁以下,村上博「ドイツにおける都市計画瑕疵論」神長勲[ほか]著『現代行政法の理論室井力先生還暦記念論集』法律文化社(1991)72頁以下,芝池義一「計画裁量概念の一考察杉村敏正先生還暦記念」広岡隆,高田敏,室井力編『現代行政と法の支配』有斐閣(1978)187頁以下。10とりわけ行政裁量論についていえば,いくつかの法学方法論からの議論はドイツ行政法学において基本文献としてみなされている。8で触れるアレクシーの裁量瑕疵論はその一つである。また,ドイツにおいては,衡量原則は基本法20条3項の問題であり,一方で,その司法審査の問題は基本法19条4項の司法権限の問題になる。この二つをどのよう捉えるのかは行政法学の領域を越えた法学方法論の課題となるという点も重要である。この点については,Andreas Voskuhle, Grundwissen - OffentlichesRecht: Entscheidungsspielraume der Verwaltung (Ermessen, Beurteilungsspielraum,planerische Gestaltungsfreiheit) , JuS 2008, 117?119(117)を参照。