ブックタイトル高知論叢111号

ページ
78/164

このページは 高知論叢111号 の電子ブックに掲載されている78ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

高知論叢111号

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

高知論叢111号

76高知論叢第111号使用不許可事件最高裁判決を取り挙げる。そして3において,まずは,ドイツ行政裁判所法114条にある制限的司法審査が前提としている効果裁量についてその概念と統制手法を概観しながら,ここでは判断の過程と帰結が問題にされてはいない,という点を示す。次に4では計画裁量とその統制について,とりわけ,著名な板ガラス判決を中心に据えて検討しながら,衡量原則及び司法審査が判断の過程と帰結にどのように結びついているのか,そしてその問題点を指摘する。その後,5以下では現代ドイツの法学方法論である基礎づけ理論・論証理論の立場から,4までで示してきた議論について批判的検討を行うコッホ及びアレクシーの見解をみていくことにする。2.呉市学校施設使用不許可事件11にみる効果裁量,計画裁量統制手法,及び判断の過程従来,最高裁は裁量審査において,行政決定そのものの結論の妥当性を「社会通念」から判断する手法をとってきたが,ここから判断過程の妥当性をみる手法へシフトした,と一般的に評価されているものとして,呉市学校施設使用不許可事件がある。本稿ではこれを判断の過程と帰結という観点から問い直し,我が国の問題状況の一端を示すことから始めたい。事例の要約は以下の通りである。広島県教職員組合が教育研究集会の会場とする目的で呉市教育委員会に同市立中学校の体育館等の使用許可を申請したところ,同教育委員会は,教育研究集会の活動内容やこの集会に対して予測される右翼団体による抗議行動が学校教育に及ぼす支障等を理由に,不許可処分を行った。その結果,本件集会は複数の施設を会場として,分散開催となったた11最判平成18年2月7日民集60巻2号401頁。本稿では特に,以下の評釈を参考にした。山本・前掲注(2)218頁以下,三浦大介「行政財産の目的外使用呉中学校教研集会事件」(平成18. 2. 7最高三小判)『地方自治判例百選<第4版>(別冊ジュリスト215)』(2013)104頁,黒原智宏「公立学校施設の目的外使用の不許可処分と司法審査呉市公立学校施設使用不許可国家賠償請求事件上告審判決」自治研究84巻10号(2008)142頁以下,仲野武志「公立学校施設の目的外使用の許否の判断と管理者の裁量権」判例時報1956号(2007)177頁以下,岡田正則「「公の施設」の目的外使用許可における裁量の限界呉市学校施設使用不許可事件」法学セミナー51巻10号(2006)116頁。